「白熱ガス灯」はガスの炎を取り囲む「マントル(回浮)」を設け、それによってガスの炎の暗い黄色い光を明るい白い光に変えた明かりである。白熱ガス灯は、科学者として、またベンチャー企業家として活躍したオーストリアのカールーアウアー・フォンーウェルスバッハによって発明された。魔法のような働きをする彼のマントルの組成は、99%の「酸化トリウム」と1%の「酸化セリウム」からなっている。この組成が、彼の発明の根幹をなしている。ウェルスバッハと彼の仕事については、のちほどくわしく紹介する。ロウソク、オイルランプ、ガス灯、そして新しく登場した電球の光は、どれも黄色く弱々しいものであった。このような明かりしか知らなかった当時の人々にとって、ウェルスバッハの白熱ガス灯は、真昼の太陽のような奇跡の光に見えたことだろう。この奇跡は、キャンプの夜のテーブルの照明を、ロウソクからブタンやプロパンガスを燃料とするガスランタンに代えてみれば実感できる。一般家庭以外に白熱ガス灯を大量に使用した最大のユーザーは鉄道会社で、客室内の照明、前照灯、尾灯などに用いられた。