日暮れ時になれば、ヤシの若葉を編んでつくられたカゴの中に色とりどりの花や米を入れたお供え、チャナン・サリが並べられる。これは神に安寧を祈るときのもっとも簡素なお供えだそうだが、人々はお供えの前にひざまずき、水をふりかけ、線香を立てる。周囲が次第に暗く静かになり、遠く線香の光がポツンポツンと見えてくるのは、幻想的な風景である。ここで、バリの絵画にふれてみたい。ラヤ・ウブドゥ通りやモンキー・フォレスト通りなど、ウブドゥ村のノインストリートには、バリ絵画を集めたギャラリーが多い。繊細な筆使いで描いた庶民のくらしの模様、例えば、水浴びをする女たちとか、一家総出で田植えをする農民といった絵があるかと思えば、森林の中の花や蝶、鳥や蛇の、自然や動物をテーマにした作品など題材の範囲も広い。バリ絵画はもともと宗教と結びついて生まれたとされている。一四世紀後半のころで、当時の様式は、影絵芝居に登場する人形をモチーフにヒンズー教の神話やそれにまつわる叙事詩を描いていた。また墨だけで表現した細密画も、このころからの伝統的な手法とされている。その後、オランダ統治下の一九二〇年から三〇年代に、ドイツやスペインなどヨーロッパの著名な画家がウブドゥに住みつき制作活動をはじめたことで、バリ絵画にも新鮮な画風がもたらされるようになった。日常的なくらしの様子を描いた作品や、遠近法をとり入れた風景画などは、ヨーロッパの影響をうけたものであり、いまに及んでいると見てよい。バリ絵画の作風の移り変わりを確認するなら、ウブドゥの北西約二キロ、チャンファン村は田園地帯にある、ネカ美術館をおすすめしたい。