「九尺二間の棟割り長屋」というのは、江戸時代の町裏の貧民街の長屋の大きさを言う。この広さは六畳間の大きさだが、これが一戸の広さ。これが横に繋がり、背中合わせに繋がって平屋建ての長屋になる。こんな長屋が並び建って町を形成するが、町筋の通りに面した所ではなく、通りに並ぶ家と家の間の細い路地を奥に抜けた所にある。だから裏店(うらだな)と呼ばれた。何故店というのか。通りに面した家が大家さんで長屋はその店子だった。つまり屋敷の奥の空地を利用して借家を長屋の型式で建てたというわけだ。貧民街と言ってもそれだけで町を成していたのではなく、混在していた。六畳の広さの、つまり四畳半が畳敷きで外に向いた3尺巾で9尺の土間が玄関兼台所であった。台所には木箱のような流し台と水桶、コンロが一つ。棚の上に食器や鍋釜が積まれていた。押入は無い。夜具は部屋の片隅に積んであった。足の畳める卓袱台の廻りに座布団数枚、タンスが一竿、家の中の様子はこんなところだ。便所や風呂場は無い。便所は長屋街のどこかにあって、そこに行って用を足す。井戸もそのあたりにあった。風呂は銭湯に行く。