雲居雁の部屋に父の頭中将がずかずかと入ってくる。そして扇を鳴らして娘を起こした。すると娘が「無邪気に見上げなさったそのまなざしが可憐で、頬が赤らんでいるのも、親の御目にはただただ可愛いと思う」。雲居雁は十七歳。当時の上流貴族女性は十六くらいで結婚したから、適齢期ど真ん中である。親の目には可愛い昼寝姿も、客観的に見れば危険なエロスの匂いに満ちているわけで、頭中将はそのように客観的に見る人の目を考えて、娘をいさめる。「うたた寝はしないようにと注意申し上げているのに、どうしてこんなに無防備におやすみになっているのです。女房たちも近くに控えていないとは妙だな。女は常に心遣いして身を守っているのが良いのです。気安く投げやりに振る舞うのは下品なことです。といって、あまりに小賢しく身を固くして、不動の陀羅尼など読んで印を作っているのも憎らしい」守るべきところは守って、しかしほどほどにと頭中将は言い、「熱心に言い寄ってくる男になびいたりしてはいけませんよ」とクギを刺す。雲居雁には光源氏の息子の夕霧が求婚していて、のちにふたりは結婚するのだが、頭中将は光源氏へのライバル心からやみくもに反対していた。入ってきたのが父ではなく男だったらどうすると忠告したわけだ。
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