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重要なのは、「言葉」ではなく、「いいまわし」

翻訳に使える表現をさがす。その際に重要なのは、「言葉」ではなく、「いいまわし」である。もちろん、あまり馴染みのない言葉を探して、語彙を増やすことも重要だが、それ以上に、この「いじましい計算」のように、ある名詞にどのような形容詞がつくか、この「計算もはたらいて」のように、ある名詞にどのような動詞がつくのかを知ることである。言い換えれば、「単語」も重要だが、それ以上に「活用」が重要なのだ。ある名詞にどのような形容詞がつくのか、ある名詞にどのような動詞がつくのかなどは、ほぼ決まっている。日本語でも外国語でも、この点に変わりはない。しかし、外国語のある名詞につく形容詞の範囲は、その語の訳語として定着している日本語の名詞につく形容詞の範囲とは違っていることが多い。名詞に形容詞がついただけの部分でも、この微妙な違いのために、とんでもない訳ができあがることが少なくない。翻訳物で実際に目にした例をあげれば、「増加した利率」(利率は上昇するのであって増加はしないのだが)、「冷やかな絶望」(冷やかなとは他人に向けられた感情を形容する言葉、絶望はこの場合、自分の運命についてもつ感情だったのだが)などがある。翻訳の際には、外国語で書かれた原文があるので、よほど意識化していないと、日本語に狂いが生じかねないのだ。このため、翻訳にあたっては、書き下ろしのとき以上に文章力がなくてはならない。