中古品マーケットの人気を、愛知淑徳大学教授の山田登世子は「ブランドのオタク化」と評する。ブランドのオタタ化というのは、文字通りオタク的感覚でブランドの道を極める性向である。(中略)カタログ情報誌はなにも売買という実用性のためだけでなく、たんに情報を楽しむためにも存在しているからである。リサイクルーショップにしても同じ。そこへ通りのは、売買はもちろんとして、陳列されている商品を現場で確かめる快楽のためでもあるのだ、そうしながら〈ブランド〉オタクたちは「ブランドの現在」を肌で知る通になり、セミープロになっていく。(yガジソハウス『ブランドの世紀』二〇〇〇年)ブランド情報誌を見るだけの読者がどの程度いるのかはわからないが、少なくともブランドに対する興味・関心が高く、相場を知りたい読者であることは間違いない。今このブランドのバッグはいくらで買えるのか、売ればいくらぐらいになるのか。人気ブランドのありとあらゆる型、限定品までもが網羅されている誌面を読めば、確実に知識は増え、ブランドのプロになる。楽天プリマでは、一円オークション(入札価格が一円からスタートする)にブランド品が出品されることがあるが、ほぼ相場の値段で落札されるという。利用者は「これぐらいの値段であれば妥当だ」と、相場をよく知っているのである。『フラソズオフ』の編集人である猪俣もいう。「読者の情報量は非常に豊富です。こちらが圧倒されるほど、ブランドに関する詳細な情報を持っている」正直なところ、ブランド情報誌に登場するブランド品には本来あるはずのステイタスがあまり感じられない。ブランド情報誌とはファッション誌のカタログ的な部分を濃縮して相場情報を付け加えたようなものだ。情報誌なのだから当然なのだが、ブランド品が単なる取引の対象として無味乾燥に扱われている。だが、情報量は濃密だ。山田が指摘するように、この雑誌を読めば豊富な情報が得られる。ブランドのオククになれる。しかし、そのオタク化とはブランドの商品や相場情報に関してであって、文化や歴史、物語ではない。読者にとって、ブランドの背後にある物語性や伝統は二の次、三の次だ。せっかく高級なブランド品を買うのであれば、直営店で丁寧な接客を受けて買ったほうが気分がいいのではないかと思うのだが、ブランドのオタクは場所を選ばず、買い物に付随する付加価値(サービスや時間、雰囲気など)を重視しない。実にドライで合理的な買い物をしている。ただし、その合理的な価値観とは、結局はブランドの権威の上に成立するものでしかない。価値基準をブランドに置いた上で、情報を駆使してドライな買い方をする。ブランドの権威に頼りながら、権威の成り立ちや文化は軽視し、流行のモノとして扱う。何とも面白いねじれ現象だ。結局、中古品マーケットの賑わいも含めて、日本のブランドビジネスの大盛況とは、ブランド側か主張してやまない「伝統と文化を背景にした、本当に質が高く、ステイタスがあるもの」という言い分をさらっと聞き流す、あるいは全く関心がない消費者に支えられているのである。ブランド品の流通経路にはいくつかのパターンがある。代表的な流通経路は、商社やインポーター(ファッションの専門商社)がブランドと代理店契約を結び、輸入したブランド品を百貨店や専門店に卸すという流れだ。海外のブランドが日本に進出し足場を固め、大衆化していく過程で、商社と百貨店は大きな役割を果たしてきた。ここでは、ブランドビジネスが消費者の目に見えない舞台裏でどのように営まれ、商社と百貨店がどう関与しているのかを見ていきたい。